症例7 ブリッジ形成時の露髄

 初診は1994年、当時21歳男性。2016年1月に転倒 し、前歯を強打した。2月に来院。右上1は電気歯髄診断器を用いた試験を行っても反応がなく、また舌側に10mmの歯周ポケットが認められた。歯根破折を疑ったが100%診断が確定できないため、まず根管治療を行ってみた。3月(スライド上段)、改善傾向はまったくみられなかったため、右上1は歯根破折と診断し抜歯することにした。抜歯する前に仮歯を作製しようと隣在歯である左上1および右上2の切削に取りかかったところ、極僅か形成した時点で左上1の神経が露出してしまった。(左上2に近い、点状に赤くなっている所) 直ぐにスーパーボンドという接着剤で閉鎖し、仮歯のブリッジを作製、同時に右上1を抜去した。 
 約半年後の9月、再形成を行った。「3~4月はだいぶしみた」とのことであったが、9月の時点では消失していた。さらに、2ヵ月経過をみて、11月にもう一度再形成を行った。
 一度に多く形成するとまた神経が露出する可能性が高くなるが、日を追って少しずつ形成すると、歯の神経の方が刺激に反応して退縮してくれるので露出しなくてすむ。
 しかし、この時点で仮歯の厚みを計測すると1.1mmしかなかった。良好な見た目を得るには、金属0.5mm,ポーセレン1.0mm必要であることから、まだ0.4mm形成が足りなかった。しかし、これ以上の形成は危険だと判断し、仮歯の方を0.4mm厚くし(スライド中段右)、患者さんに使用してみてもらったとこ ろ、特に問題ないという返事をいただいた。技工士さんにはこの仮歯と同じ形態、すなわち少しオーバーカントゥアな最終補綴物を依頼した。12月にメタルボンド冠ブリッジを装着した。念のために仮着中であるが、2017年9月の時点では特に問題なく経過している。