症例2 歯肉縁下カリエス(2)

 2016年9月初診、65歳男性。主訴は左下奥歯の治療希望。患者さんは歯の保存を希望していたが、当初さすがに保存は不可能と思われた。まず、歯周基本治療、他部位の虫歯の処置を行い、いよいよ左下をどうするかに至った。患者さんには、保存困難で予後不良になり得ることもあることを伝え、ご理解していただいたうえで、12月に再植を試みた。
 左下6の近心根は、歯冠長の増大を行うにとどめた。遠心根は頰側根、舌側根に分離していたため、頰側根は歯肉縁上歯質が確保できる位置に再植した。左下7の近心根は保存不可能と判断して抜歯し、同部に左下6遠心根の舌側根を移植するとともに、左下7の遠心根は再植した。
 2017年3月、アバットを装着し、仮歯で食事できるか等の反応をみたうえで、5月に連結冠を作製し装着した。
 装着後のデンタルX線写真をみると、左下6近心根の冠が若干不適合になっている。試適時には適合していたので、ロウ着時に変形が生じたか、あるいは若干歯が動いたかが考えられるが、「後の祭り」である。