2014年2月初診、56歳の女性。右下7のカリエス(虫歯)が歯肉の下まで進行していた。クラウンが長期にわたり外れないための条件は、歯肉の上に歯質が存在し、クラウンでそこをしっかりグリップする必要がある。しかし、このケースは歯肉縁上歯質がないため、このままクラウンを作製しても直ぐに脱落するのは明らかである。
　そこで、右下7の遠心に矯正用インプラントを植立し、これを固定源に利用することで、右下7の矯正的挺出を行うことにした。2014年3月に開始し、5月に終了した。その後、歯肉を下げる手術（歯冠長増大術）を行い、歯肉縁上歯質を確保した。暫く仮歯で経過を観察し、2014年10月、クラウンを装着した。
　歯根が短くなったために、歯の動揺が少し生じたが、相当固いものを食べなければ問題はないとのこと。もしどうしても動揺が大きい場合は右下6との連結固定が必要となるが、歯の削去および連結により清掃性が不良になりやすい等の問題が生じるため、なるべく連結固定は避けたいと思っている。