症例3 支台歯を削去しない可撤性ブリッジ(2)

 2000年初診、48歳女性。2015年11月、左上3の歯肉より膿がでたということで来院。左上3の電気歯髄診断を行ったところ反応がなかったため、感染根管治療を行おうとした。しかし、切削途中に痛みが生じたため左上3の神経は生きており、膿の原因は他の歯であると診断した。よく観察すると左上4の頰側に10mmの歯周ポケットがあり、この歯の歯根破折を疑った。1ヵ月間、歯の根の治療を行い、経過をみたが改善しなかったので抜歯した。結果、歯根に破折線がみられ、歯根破折と確定した。
 さて、通常は左上③4⑥のブリッジが考えられるが(左上5は歯科矯正のため抜歯したとのこと)、左上3がほぼ健全歯であることから、切削を行わないですむ可撤性ブリッジ(コーヌス義歯)を装着することにした。なお、左上6にはすでにクラウンが装着されており、切削を躊躇する必要はなかった。なお、可撤性ブリッジの維持は左上6のコーヌス冠のみで発揮されている。左上4部にインプラントを勧める歯科医師は多いと思うが、安全面、清掃性、費用等の面から私は可撤性ブリッジ方に分があると思っている。