症例6 根尖病巣

 1999年初診、55歳女性。スライド上段3枚は、2012年11月の状態。2014年6月、夜間就寝時に左下7に痛みが出たとのことで来院した。デンタルX線写真に以前から根尖病変がみられたが、咬みしめの可能性も否定できず、暫く様子をみてもらった。しかし、7月に激痛が生じ、これは根尖病巣による急性症状と診断した。抗生剤を投与したのち感染根管治療を数回行ったが、根管が閉鎖しており内科的な治療は不可能と診断した。そこで8月、まず3週間にわたり、左下7の矯正的挺出を行い、抜歯しやすいように細工した。9月、歯の動揺を確認したのちに抜歯を行い、口腔外でスーパーボンドにより根尖を封鎖した。直ちに元の場所に戻し、隣在歯と3週間固定した。3ヵ月経過を観察し、補綴処置に移行した。

 左下は固定性ブリッジでも対応できるが、左下7の予後が心配なため、今回は可撤性ブリッジを選択してもらった。これは将来もし左下7を失うことがあっても、左下4を支台歯に組み込むことで、片側の義歯に移行できるからである。右上に示すデンタルX線写真から、根尖病変が消失しているのが分かる。まだ経過は短いが、2017年5月の時点で根尖病変の再発もなく順調に経過している。